【バイリンガル 3-①】母国語にこだわらない、バイリンガル環境を考える
前回の投稿ではバイリンガルになる認知的・言語学的発達・社会的発達について触れ、バイリンガル環境での成長がもたらす最も大事な利点、社会性・人間としての発達について話してみました。

今回の投稿では幼児期からバイリンガルを目指すと決めたら家族の状況や環境に合わせて立てておきたい目標とプランについて話してみたいと思います。
- バイリンガルとは?(WHAT)
- ① バイリンガルの定義:流暢さって何?「基準のズレ」を考える
- ② 日本のバイリンガル観を、世界の実例で比べる
- ③ 子どもは本当に「簡単に」言語を習得できるのか?
- バイリンガルを目指す理由とは?(WHY)
- ① 幼児期から外国語を学ぶメリットー 脳・発音・言語発達の視点
- ② AIがあっても言語を学ぶ意味はある?私がたどり着いた答え← 今回の記事
- バイリンガル育児のプランを立てる(WHEN/WHERE)
- ① 母国語にこだわらない、バイリンガル環境を考える← 今回の記事
- バイリンガルになるための日々の生活(HOW)
- バイリンガルを育てる人・なる人(WHO)
- バイリンガル育児に役立つリソース(+)
「母国語」「ネイティブ」は本当に定義できるのか。
まずは皆さんに質問です。
幼児期からバイリンガルの場合、ある言語を「母国語(Mother Tongue)」もしくは「ネイティブ」ということは可能でしょうか。
私たち夫婦の場合と子供たちの場合を話してみたいと思います。
同じ「バイリンガル」でも、背景は全く違う
赤ちゃんの時からご両親が共働きで祖母に預けられることが多く、両親とは言語1、祖母とは言語2でコミュニケーションをとる。4歳の時に一時的に外国で生活し、言語Cに触れる。言語3でコミュニケーションが取れるようになっていたのは5歳まで、その後は英語圏の国に移り小学校から大学までが英語(言語4)。本人の中で一番流暢でいわゆる「ネイティブ」と感じる言語は「英語」だが、言語3を大人になってから習い直し流暢になる。言語1は「聞く」「話す」「読む」であまり不自由しないが、「書く」のは難しい。言語2は聞き取れるがそれ以外はできない。
18歳までモノリンガル。英語に触れたのは小学校。英語以外の第二外国語に触れたのが15歳の時。第二外国語は20歳で流暢に、英語が流暢になったのは23~24歳の時。状況と場合によって一番楽と感じる言語が違う。
英語と日本語のインプットが生まれた時から同時に起きている。英語はホーム言語、日本語は家族の外で使う言語になっているが、ママもパパも日本語が話せることを認識しているため、日本語が混ざることがある。娘の場合2歳前は日本語が強かったが、今では英語も流暢、バランスが取れている。息子は常に英語に偏っていて独り言が英語で日本語ではわからない単語も多い。
この例でもわかるように私の場合は、英語に初めて触れたのが小学校高学年の時からで、18歳までモノリンガルだったので、はっきりと一つの言語を「母国語」と定義できたと言えます。しかし、どの言語が「ネイティブ」レベルかと言われるとそれはトピックや場合によることが多いと感じます。
夫と子供たちの場合、私とは違って「母国語」いう単語を特定の言語につけるのが簡単ではありません。その理由はどちらの言語もほぼ同じ時期からインプットが行われていて、時期によってどちらかは優位になっていたはずですが、その差が微々たるものだからです。
「母国語」より、ホーム言語、スクール言語、優位言語で考える
それでも何らかの定義が必要であるなら、家族の中で一番よく使われている英語を「ホーム言語」、保育園や家の外で一番使われている日本語を「スクール言語」、また私たち夫婦が親戚との間でそれぞれ話、若干接点がある言語を「第二言語」として考えられるのではないかと思います。
もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんの時から複数の言語ではなく日本語だけを使っていたなら、日本語が「母国語」として扱われていいと思います。ただし、3歳以下の幼児期から「外国語」を日常的に触れて使ってきた場合(スクール言語が英語だったなど)は、やはり「ホーム言語」と「スクール言語」に分けたり、時期によって「優位言語(Dominant Langauge)」が変わっていくというふうに柔軟に考える必要があると考えています。
以前も一度話したことがありますが、言語はレベルを話す時、「母国語」「ネイティブ」というような白黒をはっきり付けるのがとても難しいです。
それではバイリンガルのレベルを表現したり、目標を決める時に考えておきたい適切なレベル分けについて考えてみましょう。
最優先すべきは「年齢相当の言語」を持っているか。
以前も触れていますが、バイリンガルの子供だからと行ってモノリンガルの子供に比べて言語発達が遅れる訳ではありません。
というのもモノリンガルとバイリンガルの子供がある月齢・年齢で持っている言語・コミュニケーション能力は語彙の面で少し幅はあるものの、ほぼ等しいと言えます。
例えば、一歳頃のモノリンガルの赤ちゃんは「ママ、パパ」が言えるようになりますが、生まれた時から複数の言語に触れてきた赤ちゃんも同じく「ママ、パパ」が言えるのが普通で、それは認知的に正常に発達しているためです。
そして言語と認知的な発達は相まって起こることを覚えておいていただきたいです。
つまり赤ちゃんは年齢相当の認知能力を表現できる言語が必ず必要になってくると言うことです。
私が聞くのが、バイリンガルになると言語を混同するようになる、もしくは最初は日本語をしっかり覚える必要がある、というのはこの事です。
バイリンガルになることは利点がありますが、それはもともと子供が一番コミュニケーションが良く取れる言語を全面的にストップして他の言語をインプットするということではありません。
バイリンガルになると言うのは同じようなレベルで言語のインプットが行われることを前提としていると言うことを忘れないようにしましょう。
言語は流動的:バイリンガル育児で見るべきポイント
言葉を変えると、3年間日本語だけで生活をしてきたのに、ある日いきなり日本語のインプットがなくなり、英語だけで生活することになった子供は、英語では同じように思考する能力を持っていないというのは当然ということです。
例えば小学校に入る時にいきなり英語で小学校レベルの思考を要求されていると考えてみてください。日本語では自然に考え、解決できることでも英語では思考自体ができないのです。もし英語を追加していくとしたら、当然ながら少しずつ溶け込んでいくという過程が必要で、それは少なくとも数年かかると考える必要があり、それは知能レベルとは関係のない自然な言語習得の過程です。
つまり、幼児期からバイリンガル環境で育つということは、「どの言語が母国語か」「どちらがネイティブか」と白黒をつけることよりも、その時々の発達段階に合った言語で、きちんと思考し、理解し、表現できているかどうかが何より重要だということです。
言語は固定されたラベルではなく、環境や年齢、必要性によって優位性が変わっていく、非常に流動的なものです。
だからこそ、バイリンガル育児を考えるときには、最初に「正解の形」を決めつけるのではなく、家族の状況や子どもの成長に合わせて、柔軟に設計していく視点が欠かせません。
